私たちは糖(炭水化物)をエネルギー源として生きています。そのため糖化は避けることができません。健康と美容を考えるためには、糖化に関して正しく理解し、糖化との上手につきあうことが大切です。以下、糖化に関連する代表的なキーワードを紹介していますので、どうぞご覧ください。
【参考文献「糖化による疾患と抗糖化食品・素材(監修:米井嘉一/シーエムシー出版)」】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease:AD)は、脳を構成している神経細胞が通常の老化よりも急速に減ってしまうこと(変性)によって、正常な働きを徐々に失っていき、認知症(痴呆)になっていく病気です。原因はまだわかっていませんが、遺伝的な要因に加えて生活環境の影響が重なり、発病すると考えられています。ADの特徴的な病理構造物はアミロイドβ蛋白(amyloid β protein:Aβ)で構成された老人斑です。Aβは40個のアミノ酸からできており16と28番目のアミノ酸が糖化されると推定されています。またAD患者脳の前頭葉から得たタンパク分画には、健常老人と比べて3倍のAGEsを含むことが報告されています。現在、AβのAGE化は2次的な修飾として起こるという考え方が主流ですが、糖化によるタンパク質間の架橋がAβの凝集・沈着を促進・加速する因子として関与しているとも考えられています。
異なる構造同士がイオン性相互作用などで結びつき、構造を安定化させるような結合のこと。架橋結合の促進要因の1つが糖化反応(メイラード反応)です。糖化反応により、タンパク質中のリジン残基のアミノ基あるいはアルギニン残基のグアニジル基と糖のカルボニル基が非酵素的に反応し、シッフ塩基、アマドリ生成物を経た後で、タンパク質とタンパク質を結ぶ架橋構造を形成します。皮膚のタンパク質であるコラーゲン部分で架橋構造が形成されると分子が硬くなり、皮膚本来の弾力性が失われます。また、コラーゲンやエラスチンの架橋により、架橋物を異物と判断し、分解酵素(コラゲナーゼ、エラスターゼ)の分泌量が増えるため、架橋物よりも正常なコラーゲンやエラスチンが分解されやすくなります。これらのことから肌のハリや弾力性が失われ、また肌が脆くなり、さらにはシワ、タルミ、クスミの発生につながるのです。
カラメル化反応は糖類が100℃以上に加熱されることによって、アミノ化合物と反応することなく褐変化する現象をさします。従ってカラメル化反応と糖化反応は異なります。しかし食品は複雑な組成でできているため加熱時に共存する成分が触媒的に働き、カラメル化反応と糖化反応が並行して起こります。このためカラメル化反応と糖化反応は混同されがちです。一般の食品でカラメル化反応だけが進行することはありません。しかしカカオやコーヒー豆の焙煎・焼肉・製パンなどの場合はカラメル化反応の割合が大きいともいわれています。食品の着色に使われるカラメルは糖類を単独で加熱するだけでなく、アンモニウム塩・ナトリウム塩などを添加して使用される食品に適した特性を有するように作られています。このため市販のカラメルには糖化反応生成物も含まれています。
生体がROS(反応性酸素種)などによる酸化ストレスにさらされると、糖や脂質からアルデヒド基やカルボニル基を有する物質を生成します。これらの量が生体の消去能力を超えて増加した状態をカルボニルストレスといいます。アルデヒド基やカルボニル基を有する物質と、生体中のタンパク質や脂質が反応すると、変性して機能を失います。カルボニルストレスは糖や脂質からROSによって生成するカルボニル化合物との反応を含む、広義の糖化反応(メイラード反応)と考えられます。近年、高血圧、糖尿病および慢性腎臓病では体内にメチルグリオキサール(MGO)などのカルボニル物質が増えることが報告されています。
AGEs(Advanced Glycation End Products)の1種。グルコースが2つのリジン残基を架橋した構造。
骨の疾患には、骨髄炎、化膿性関節炎、変形性関節症、骨粗鬆症、骨肉腫、椎間板ヘルニア、慢性関節リウマチ、痛風などさまざまな病気があります。中でも骨粗鬆症、変形性骨関節症、慢性骨関節リウマチなどは糖化反応の進展に関係が深いと考えられています。かつて骨粗鬆症(osteoporosis)は「骨量の減少と骨の微細構造の破綻によって骨折に対する感受性が高まった全身的骨格疾患」とされてきました。しかし2000年にNIH(米国国立公衆衛生研究所)で開催されたコンセンサス会議において、骨粗鬆症とは「骨折リスクを増すような骨強度上の問題(compromized bone strength)をすでにもっている人に起こる骨格の疾患」であると定義され、「骨強度=骨密度+骨質」と明記されました。近年、骨粗鬆症や糖尿病における骨の脆弱化には、骨中コラーゲンの架橋異常が関与していることが明らかになってきました。コラーゲンは骨の体積あたり50%を占める主要な線維タンパクで、α鎖3本から成る3重らせん構造をとっています。細胞外に分泌されたコラーゲン分子は、規則正しく配列する際に、隣り合う分子間や分子内に架橋結合を形成します。架橋結合はコラーゲンの線維強度に関与し、機能や形成メカニズムの違いにより骨強度を高める善玉架橋と、骨を脆弱にする悪玉架橋の2つに大別されます。
ヒトの骨は生涯を通して古い骨を壊して吸収し(骨吸収)、その場所に新しい骨を作る(骨形成)ことにより、血清中のカルシウムの値を調節すると共に骨の強度も保っています。これを骨代謝と呼びます。また、骨吸収は破骨細胞が、骨形成は骨芽細胞がそれぞれ担っており、健常人の骨代謝ではこの骨吸収と骨形成はバランスがとれています。しかし、閉経になり女性ホルモンが減少すると骨吸収が亢進するためにこのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回るために骨密度が減少します。この状態が長期間持続すると骨粗鬆症になります。マウスの骨芽細胞にはAGEs受容体が存在し、特に成熟した骨芽細胞ではRAGEの高発現が見られています。またAGEs化したⅠ型コラーゲンは骨芽細胞へのミネラル沈着を阻害し、生存細胞数を減少させ、骨形成過程に悪影響を及ぼすことが確認されています。さらに破骨細胞では、AGEsが骨吸収を促進することが知られています。また骨基質成分中の90%以上を占めるコラーゲンのAGE化は骨の剛性を増加させ、外部から骨へ伝わる応力の吸収を低下させるため、骨障害の原因になっています。このようにAGEsの骨組織への蓄積は骨代謝のバランスを崩し、物理的な強度を低下させて骨を脆弱化するとされています。糖尿病における骨代謝異常に関与する因子は、インスリンの作用不足、高血糖状態、そして動脈硬化、神経障害、腎障害などの合併症があります。
食品の香りは品質や嗜好性を決める上で重要な要素の一つです。また食品の香りには、食品素材そのものが元々持っている香味と、食品が加熱調理されることによって生成する香味があります。例えば牛肉は生の状態で血液様の生臭さがありますが、加熱調理によって食欲をそそる独特の好ましい香味を生じます。ナッツやコーヒーは焙煎された後、それぞれ特有の好ましい焙煎香味を生じます。食品の加熱による香りの生成は、さまざまな成分間の複雑な反応の結果であると考えられています。中でも主要成分である糖(炭水化物)とタンパク質(アミノ酸)が関与する糖化反応は、加熱による香りの生成に重要な役割を果たしています。 既に糖とアミノ酸の組み合わせによる糖化反応生成物モデルから、さまざまな種類の香気成分が単離・同定されています。 これらの化合物群のうち、特に環状構造を持ったものは匂いの閾値が低く、特徴的な香気を示すものが多いため加工食品の香味付けに重要な役割を果たしています。 食品中の香気成分は、糖化反応の過程で生じるα-ジカルボニル化合物とアミノ酸が脱水縮合してできた化合物が、さらに酸化的脱炭酸化を受けてアルデヒドやピラジンを生成する反応から生じます。この反応はドイツの化学者、アドルフ・ストレッカーが研究したことからストレッカー分解とよばれています。香味は本反応で生じるアルデヒドやピラジン類によるものです。アスコルビン酸(ビタミンC)の酸化物であるデヒドロアスコルビン酸もα-ジカルボニル化合物としてアミノ酸と反応し、ストレッカー分解によりデヒドロ-L-スコルバミン酸を生成すると赤~褐色の色素になります。この現象はアルコルビン酸を多く含む野菜やカンキツ類のジュース貯蔵中に見られています。
糖尿病とは、炭水化物の代謝障害によって発症する病気といえます。 私たちは、食べ物を消化・吸収することで、生命を維持し活動するためのエネルギーを得ています。食物中の栄養素には、炭水化物、脂質、たんぱく質があり三大栄養素と呼ばれていますが、エネルギー源として最もよく使われるのが炭水化物です。炭水化物は、消化・吸収されブドウ糖となって肝臓へ送られます。そのうちの一部は脳や筋肉で利用され、残りのブドウ糖は肝臓内にグリコーゲンとして蓄えられます(さらに余った分は脂肪になります)。身体活動で血液中のブドウ糖を消費すると、グリコーゲンが分解されて再びブドウ糖となって血液中に放出されます。このようにして、活動のためのエネルギーが常に維持され、血糖値は一定の範囲内の変動におさまっているのです。 通常、ブドウ糖を血液中に一定に保つために、必要なだけ筋肉や脂肪細胞に取り入れるようにコントロールしているのが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンです。 ところが、そのインスリンがすい臓から分泌されない、あるいはその量が不足している、逆に必要以上に分泌されているのに十分に作用しない、などさまざまな原因で慢性的に血糖値が高くなるのが糖尿病です。 血糖値が高くなると、体の中の大切な臓器や細胞に障害を起こします。特に細かい血管の集まっている眼や腎臓などは障害を受けやすく、糖尿病特有の合併症(網膜症、腎症)を引き起こします。また、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化も起きやすくなります。 さらに、神経の障害が起きるなど、体のあらゆるところで重大な疾病を引き起こす病気です。 糖尿病は大きく分けて、自己免疫異常でインスリンの分泌にトラブルが生じて発症する(インスリン依存型糖尿病)「1型糖尿病」と、遺伝的な要素に、ストレスや肥満、運動不足などの生活習慣が重なって発症する「2型糖尿病」とがあります。 現在日本では、糖尿病患者の8割以上は「2型糖尿病」です。これは、現代社会の生活様式の問題、特に、過食、肥満、運動不足、ストレスが誘引となってインスリンの働きが低下するために、糖尿病発症を引き起こしやすくなっていると考えられます。
糖尿病性腎症は、糖尿病性末梢神経障害および糖尿病性網膜症とともに、糖尿病の3大合併症のひとつです。 進行すると腎機能が悪化し(腎不全)、現在では透析療法を受ける患者さんの原因疾患の第1位を占めており、透析療法に至った糖尿病患者の5年生存率が約50%と報告されています。糖尿病になって10年以上経過してから徐々に蛋白尿(たんぱくにょう)が現れ、やがてネフローゼ症候群となって浮腫(むくみ)を来し、腎機能が悪化してくるのが典型的な経過です。 高血糖による血行動態の変化としては、腎症の発症早期より糸球体過剰濾過と糸球体高血圧が認められ、これらの変化は血管内皮細胞の障害を介して、メサンギウム細胞(糸球体外血管間膜)の機能異常を引き起こします。代謝因子の変化としては、DAG-PKC-MAPK(mitogen-actiated protein kinase)の活性化、タンパク質の糖化亢進によるAGEsの蓄積、酸化ストレスの亢進があり、これらが相互に影響しながら腎症発症・進展に関与していると考えられています。
糖尿病の慢性合併症のうち、目に起こるものの中で最も重要なものが糖尿病性網膜症です。何故なら一度進展してしまうと治りにくく、しばしば失明の原因となるからです。現在日本において、年間3,000~4,000人が糖尿病が原因で失明しており、中途失明の原因の第一位となっています。 糖尿病の眼合併症には、基底膜異常から遷延性角膜びらんを繰り返す角膜症、若年期にも発症する白内障、網膜症があります。網膜症の発症機序はジアシルグリセロール(DAG)-プロテインキナーゼC(PKC)経路の活性化、ポリオール代謝経路の活性化、酸化ストレス、糖化反応の亢進によるAGEsの蓄積が知られています。
動脈硬化は、血管の壁が硬く変化して血管が細くなり、血液が流れにくくなる病気です。血流が途絶えると、そこから先へは酸素や栄養が行き渡らず、細胞が活動できなくなり、ついには細胞が壊死します。狭心症や心筋梗塞などの心臓病や脳梗塞は、動脈硬化が原因で、心臓や脳の細胞が働かなくなることから発症します。 日本人の死因の第1位はがんですが、2位と4位は心疾患、脳血管疾患が占めています。動脈硬化が人の命を左右する、大変重要な病気であることがわかります。また、糖尿病の合併症のひとつに足の壊疽がありますが、この発症にも動脈硬化が関係しています。 動脈硬化の種類にはアテローム(粥状)硬化、中膜硬化(メンケルベルグ型動脈硬化)、細動脈硬化などのタイプがあります。 アテローム硬化は、脂質異常症(高脂血症)や糖尿病、高血圧、喫煙などにより生じると考えられます。最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となるのです。特に動脈硬化症の主要な危険因子になっている糖尿病では、虚血性心疾患、脳血管障害、閉塞性動脈硬化症の合併頻度が高くなります。 糖尿病は、高血圧や脂質異常症との相互関係の中で動脈硬化を進行させるとともに、血糖値が高いこと自体、タンパク質の糖化によるAGEsの発生やHDLの減少などを起こし、血管の壁を傷つけ、動脈硬化を進行させます。
皮膚表面には毛穴(毛孔)を中心に縦横、放射状に走る皮溝と、それによって囲まれる皮丘からできる皮紋が作られています。若年者の皮紋は、細かく、凹凸が鮮明で、形状が整っており、皮膚に緻密な質感「きめ」を与えています。しかし、皮膚は加齢と共に皮溝が浅く不鮮明になると、毛孔の大きさが大きくなって皮紋が変化し、「きめ」の粗いざらざらした質感になります。皮紋の変化は、弾性線維の加齢に伴う変性、減少、消失が考えられています。
皮膚の色調は主にメラニン(褐色)、カロチン(黄色)、ヘモグロビン(赤~青みを帯びた紅色)で決まります。さらに角質層の厚さや表面状態(きめ、シワ)などによる光の反射、吸収によっても左右されます。加齢に伴う色調の変化では、赤みの減少、黄みの増加、明度の低下が見られ、結果として皮膚が「くすむ」方向に変化します。くすみの要因は色素沈着、血流の低下、角質層の肥厚、タンパク質の変性(酸化、糖化)が関与していると考えられています。
皮膚は身体を包み込む袋のような臓器で、生体内部を衝撃、温度、紫外線、化学物質などの外部環境から保護する役割を担っています。皮膚は外側から表皮、真皮、皮下組織の3層からなり、各層に固有の機能があります。 表皮は皮膚の3層構造の最も外側にある平均0.2mm(掌や踵などの肥厚部では0.2~0.3mm)の層です。さらに表皮は4つの層に区別され、外側から角質層、顆粒層、有棘層、基底層と呼ばれています。最も外側の部分である角質層は、水をはじき、細菌やウイルスなどが体内に侵入するのを防ぐと共に、皮膚の内側にある筋肉や神経、血管などの器官を外傷から守る働きをしています。 角質層は死んだ細胞が集まった平らな層で、毛髪や爪にも含まれている成分であるケラチンというタンパク質でできています。角質層のケラチンは、古くなってはがれ落ちると下の層から新しい細胞が押し出されるようにして上がってきます。表皮層の内側には、皮膚の色を濃くする色素をつくっているメラニン細胞や皮膚の免疫機能にかかわるランゲルハンス細胞があります。 真皮は表皮の下にある2.0~3.0mmの層で、膠原繊維(コラーゲン線維)と弾性線維(エラスチン線維)、プロテオグリカン(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸など)などの細胞外マトリックスでできており、皮膚に弾力性と強さを与えています。真皮の乾燥重量の70%はコラーゲンが占め、皮膚に「はり」を与えています。一方、1~2%を占めるエラスチンは架橋構造を持ち、皮膚の「弾力性」を与えています。プロテオグリカンは多量の水分を抱えるゲルを形成し、皮膚に「うるおい」を与えています。その他、真皮内には触感、心地良さ、温度を感じる神経終末、体温調節や皮膚にうるおいを与え柔軟な状態に保つ働きを保つための分泌腺(汗腺、皮脂腺)、毛包、血管などがあります。 皮下組織は真皮の下にある脂肪層で、体を外気の熱や寒さから守ると共に衝撃に対するクッションの役割を担っています。また皮下組織中の脂肪細胞には脂肪が蓄えられ、エネルギーの貯蔵部位としての役割を果たしています。脂肪層の厚みは体の部分によって異なります。
シミには肝斑(皮膚医学としてのシミ)、雀卵斑(いわゆるソバカス)および老人性色素斑があります。老人性色素斑は日光露出部に現れる色素斑で、円形で境界が不鮮明な茶色~黒色の斑紋です。この色素斑は紫外線による色素細胞の異常で、30歳代(20%)から50歳以上(92%)に認められますが、まだ発生メカニズムの解明に至っていません。
シワは、きめよりもマクロなレベルで生じる皮膚の形態変化で、ほぼ25歳以降に、目や口の周囲、額、首などの各部位に現れ、加齢と共に数や程度が増加していきます。シワの発生するメカニズムは必ずしも明確になっていませんが、顔面や首などでは筋肉の動きと密接に関係しています。また、日光の影響で強く現れるシワについては、皮膚が紫外線により柔軟性を失い、変形に対する復元力低下が影響していると考えられています。
加齢と共に表皮では基底細胞の増殖が低下して表皮が薄くなり、角質層が新しく置き換わるのに要する時間(ターンオーバー時間)が延長します。真皮の線維芽細胞でも、増殖機能やマトリックス成分の合成能力が低下します。その結果、真皮が萎縮して、はりの無い皮膚へと変化します。細胞機能の低下は、ホルモンや増殖因子などの細胞調節機能因子が、皮膚細胞に対して十分に反応しなくなることが要因になっています。このような機能変化は、角質層が傷害を受けた時のバリア機能回復遅延、水分保持機能の低下(乾燥)、性ホルモンの分泌変化に伴う皮脂分泌量の変化、皮膚血流量の低下、脂質や糖質の代謝変化などが要因になっています。
皮膚老化のメカニズムは、遺伝子に情報として組み込まれているとする「プログラム説」と、環境因子によって遺伝子やタンパク質などの生体成分に障害が蓄積すると共に遺伝子翻訳に誤りが生じるという「障害蓄積説」の2つが合わさったものとして理解されています。皮膚は外部環境に直接さらされていることから、紫外線、酸化、乾燥が老化の外部要因として大きな促進因子になっています。 一方、人は主に食物中の炭水化物を分解することによってエネルギー源としているため、生存期間の長さ(加齢)に伴うグルコースとタンパク質との反応(糖化)の影響を避けることができません。 血中のグルコース濃度(血糖値)は、健康な人で通常(食後2時間以降)およそ100~140mg/dLを維持しています。糖化は非酵素的な反応であるため、血糖値(グルコース濃度)およびグルコースとタンパク質との共存時間によって反応生成量が決まります。このため加齢に伴い、糖化により生体中に生成、蓄積するAGEs量が増加します。特に糖尿病を発症すると、血糖値が200mg/dL以上になる時間が長期間になるため、蓄積するAGEs量も健康な人と比べて顕著に多くなります。 皮膚中のAGEs量と加齢および糖尿病との関係を調査した結果、皮膚コラーゲン中のAGEs蓄積量が加齢と共に増加すると、糖尿病患者での蓄積量が同年齢の健常者よりも多いことや糖尿病患者の皮膚弾力が健常者と比べて低下していることが確認されています。
AGEs(Advanced Glycation End Products)の1種。3DGとリジン残基の反応により生成されます。腎糸球体などでの蓄積が確認されています。糖尿病患者では、健常者と比較して血漿ピラリン値が約2倍に増加していると報告されています。
糖尿病の臨床において血糖値コントロールの指標として用いられているHbA1c(糖化ヘモグロビン)は、赤血球にあるヘモグロビンのうち、ブドウ糖と結合した糖化蛋白のことです。糖化の程度は血糖値の高さに比例し、ヘモグロビン全体に占める糖化したヘモグロビンの割合で示されます。赤血球の寿命は約120日なので、この間に糖化を受け、やがて血液中から消えていくため、過去1~2か月の平均血糖値を反映するとされています。2010年7月より施行された糖尿病の新しい診断基準では、HbA1cを診断基準の第一段階に取り入れました。HbA1cには、「糖尿病の特徴である慢性高血糖を表す指標として適している」「食事による影響を考えずに採血・検査できる」「日々の変動が血糖値より少ない」といった利点があり、日本では世界に先駆けてHbA1c値の測定や精度管理、標準化が進んでいます。新しい糖尿病の診断規準では、1回の採血で血糖値とHbA1cの測定結果がともに糖尿病型であれば、糖尿病と診断できるようになりました。これにより、より多くの患者で糖尿病の診断・治療を早期から開始できるようになります。糖尿病の適切な治療を早期から開始することで糖尿病合併症の発症を抑えられるとの研究報告があり、HbA1cをより活用することで糖尿病の早期発見・治療を促す意義は大きいのです。
AGEs(Advanced Glycation End Products)の1種。リジン残基とアルギニン残基をペントースが架橋したイミダゾピリジニウム環を有する。ペントース以外にグルコース、フルクトース、アスコルビン酸も低率ですが前駆体となります。これまでの研究から糖尿病、動脈硬化、腎不全、アルツハイマー病、リウマチ様関節炎など背景の異なる疾患でペントシジンの蓄積が示唆されており、発症機序、進展機序を解析するのに役立つマーカーとして有望視されています。また近年骨粗しょう症における骨質のマーカーとしても注目されています。
糖化反応によって生成する褐色の物質をメラノイジン(melanoidin)とよびます。これはメイラード反応(糖化反応)の発見者であるL.C.Maillardが「メラニン(malanin)似た物質」と称したことに由来するといわれています。メラノイジンの化学構造は明らかになっておらず、多数の着色物質による集合体と考えられています。メラノイジンは糖類から生成したD-グルコシドがエナミノールを経由してアマドリ化合物になり、オソンやフルフラール類を中間体としてアミノ化合物との縮重合反応した後、ピロールアルデヒドなどを経由して生成する褐色の最終産物であると推定されています。 糖化反応は食品の調理・加工の過程で色や香りの生成およびテクスチャーの変化をもたらすため、食品の品質を構成する上で欠かせない反応の1つです。また褐変化は食品の加熱履歴や貯蔵時間と相関することから、鮮度低下や品質劣化の指標にもなっています。 グリシン、セリン、イソロイシン、グルタミン酸などのアミノ酸から得られたメラノイジンには、ヒドロキシラジカル(・OH)の消去活性が確認され、抗酸化作用を有することが報告されています。 焼魚、焼肉などの焼き調理過程で生じる「焦げ」にはヘテロサイクリックアミンの一種であるTrp-P-1(3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido [4.3-b] indole)が含まれ、発がん性を有することが知られています。一方、醤油、黒ビールなどに含まれるメラノイジンはTrp-P-1に対して抗変異原活性を有することが確認されています。 食品の加熱における糖化反応の進行とメラノイジン生成にはメリットとデメリットの両面があり、これらを制御することが食品の機能性を活用していく上で重要なポイントになっています。
糖化反応によって生成する褐色の物質をメラノイジン(melanoidin)とよびます。これはメイラード反応(糖化反応)の発見者であるL.C.Maillardが「メラニン(malanin)似た物質」と称したことに由来するといわれています。メラノイジンの化学構造は明らかになっておらず、多数の着色物質による集合体と考えられています。メラノイジンは糖類から生成したD-グルコシドがエナミノールを経由してアマドリ化合物になり、オソンやフルフラール類を中間体としてアミノ化合物との縮重合反応した後、ピロールアルデヒドなどを経由して生成する褐色の最終産物であると推定されています。 糖化反応は食品の調理・加工の過程で色や香りの生成およびテクスチャーの変化をもたらすため、食品の品質を構成する上で欠かせない反応の1つです。また褐変化は食品の加熱履歴や貯蔵時間と相関することから、鮮度低下や品質劣化の指標にもなっています。 グリシン、セリン、イソロイシン、グルタミン酸などのアミノ酸から得られたメラノイジンには、ヒドロキシラジカル(・OH)の消去活性が確認され、抗酸化作用を有することが報告されています。 焼魚、焼肉などの焼き調理過程で生じる「焦げ」にはヘテロサイクリックアミンの一種であるTrp-P-1(3-amino-1,4-dimethyl-5H-pyrido [4.3-b] indole)が含まれ、発がん性を有することが知られています。一方、醤油、黒ビールなどに含まれるメラノイジンはTrp-P-1に対して抗変異原活性を有することが確認されています。 食品の加熱における糖化反応の進行とメラノイジン生成にはメリットとデメリットの両面があり、これらを制御することが食品の機能性を活用していく上で重要なポイントになっています。
CEL はメチルグリオキサール由来のAGEs で、メチルグリオキサールは解糖系及びポリオール経路から生成します。Ⅰ型糖尿病患者の血液中メチルグリオキサール濃度が健常者に比べて約7倍の高値を示すことが報告されています。ヒトレンズ蛋白におけるCEL の蓄積量はCML とほぼ同じレベルであり、CEL は加齢や、加齢に伴って発症の増加する糖尿病合併症のマーカーになると期待されています。
CML(カルボキシメチルリジン)のこと。AGEs(Advanced Glycation End Products)の1種。 アマドリ化合物の酸化的開裂によって生成する。また、脂質の過酸化などから生じるグリオキサール、あるいは次亜塩素酸とセリンから生じるグリコールアルデヒドとリジン残基の反応により生成する。CML化したコラーゲンをヒト皮膚の線維芽細胞に添加すると、アポトーシス(細胞死)が誘導されることが報告されており、また皮膚組織の中では、比較的代謝回転の速い表皮層にも存在することがわかっている。
糖化反応中間体の一つ。糖化反応系はアマドリ化合物生成までの反応を初期段階(early stage)と呼び、以降の後期段階(advanced stage)反応と区別されている。 アマドリ化合物は、脱水、加水分解、炭素間の開裂により、グリオキサール(GO)、メチルグリオキサール(MG)、3-デオキシグルコソン(3DG)など、分子内に2つのカルボニル基(C=O)を有するα-ジカルボニル化合物を生成する。特に3DGとMGはグルコースの10,000倍の反応性を有する。このため糖化反応系におけるこれらの生成は、未反応のアミノ酸残基に作用して糖化反応を急速に進行させる。
RAGE(Receptor for Advanced Glycation Endproducts)は、1992年にAGEと結合する細胞表面受容体としてウシ肺から分離同定された蛋白です。RAGEの発現は血管内皮細胞、気管支上皮細胞、神経細胞など広範な細胞・組織で認められています。 RAGEに結合するのはAGE全ての分子種ではなく、CML、そしてグリセルアルデヒドおよびグリコールアルデヒドによって修飾されたものであることが分かってきました。 受容体RAGEをターゲットとした糖尿病やアルツハイマー病など加齢関連の疾患予防や治療の可能性について研究が進んでいます。
正式名称は、3-deoxy-D-erythro-hexos-2-ulose。アマドリ化合物から、非酸化的経路で生成されるα-ジカルボニル化合物です。グルコースより10,000倍高い反応性を有するため、AGEs生成に寄与する化合物です。糖化反応中間体の一つ。血漿中3DG濃度が100nmol/L上昇すると、糖尿病性網膜症、腎症のリスクが約2倍高くなることが報告されている。