グレープフルーツ摂取の食後血糖推移への影響

小椋真理(1,2)、八木雅之(1)、埜本慶太郎(1)、宮崎 亮(1)、金剛寺正也(3)、渡邊 昌(1,4)、濱田梅之井(1) 、米井嘉一(1)


(1)同志社大学大学院生命医科学研究科アンチエイジングリサーチセンター (2) 同志社女子大学生活科学部 (3)医療法人社団 医検会 菊野台クリニック(4)社団法人 生命科学振興会

1、はじめに

栄養と生活習慣病について多くの疫学調査がなされ、果物の摂取と様々な生活習慣病発症との因果関係についてより詳細な解析が進んでいる。近年、GFに含まれる栄養成分がメタボリックシンドロームや糖質代謝に好影響を及ぼす可能性が指摘され、注目されている。本研究はヒトにおけるGF摂取時の血糖、中性脂肪ならびにインスリンの推移を測定し、他の食材摂取との関連について検討した。

2、研究対象と方法

【 対 象 】

肥満および喫煙習慣のない健常女性ボランティア12例年齢40.5±4.2歳、BMI (22.0±0.9)、体脂肪率33.0±2.4%

*試験開始前に試験の趣意を理解し、同意書に本人による署名を得た。妊娠、授乳中の者、高血圧にて服薬中の者、糖尿病、消化管手術の既往者は無かった。本試験に参加することに同意した場合でも、試験期間中にかかわらず、被験者の自由意志により、何ら不利益を被ることなく本試験への参加を辞退することができることとした。

【 方 法 】

・試験実施期間:2010年12月から2011年1月の5日間

・摂取方法:

検査前日の21時以降は水のみの摂取、当日は朝食欠食とした。各被験者に下記スケジュールでGF単独、食パン単独、GF+食パン、GF+かき揚、かき揚げ単独を15分で食してもらい、併食の場合はGFを先に食してもらった。

・血液検査

血糖、血中インスリン、中性脂肪(4日目、5日目のみ)を測定直後(0分後)/30分後/60分後/120分後/180分後(1日目のみ)

・統計解析

統計解析ソフトDr.SPSSⅡを使用
摂取前後の比較解析:paired-t検定
2群間比較:Wilcoxon順位和検定
多群比較:Dunnett検定
結果は平均±標準偏差としてあらわした。両側検定で危険率5%以下を有意とした。

3、結果

図1:各試験接種後の血糖値の推移

図2:血糖値AUC/糖質摂取量
GFを先行摂取した方が有意に低かった(p<0.001)。

図3:各試験食摂取後のインスリンの推移
30分後インスリンはGF単独に比べ食パン単独摂取、FV単独摂取のいずれも有意に高かったp<0.001, p=0.010)

図4:GFのインスリン
AUC他の4群(食パン、GF+食パン、FV、GF+FV)に比べて有意に低かった(p<0.05)。

図5:インスリンAUC/糖質摂取量
FV単独に比べGFを先行摂取した方が有意に低かった(p<0.001)。

図6:FV摂取時の中性脂肪の推移
FV摂取後の中性脂肪は摂取30、60、120分で徐々に上昇した。

図7:中性脂肪AUC/摂取炭水化物量  FV単独に比べてGF+FV摂取の方が有意に低かった(p<0.001)。

4、考察

今回の試験ではGF摂取後の血糖値・インスリン・中性脂肪推移について、食パンやかき揚げ(FV)など他の食材との組み合わせた時の変化を中心に観察し、いくつかの知見を得た。

(1) 食パン単独摂取およびFV単独摂取に比べGF併用摂取した方が、血糖上昇曲線が緩徐であり、摂取炭水化物あたり血糖値AUCが有意に低かった。

(2) FV単独摂取に比べGFを併用することにより、摂取炭水化物量あたりのインスリン分泌が有意に低かった。

(3) FV単独摂取に比べてGFを併食した方が、摂取炭水化物量あたりの中性脂肪上昇が有意に低かった。

上記よりGF含有成分が糖脂質代謝に影響を及ぼしている可能性が認められた。