第11回

糖化を避けるためには、何を食べるかもそうですが、食べる順番も大切です。血糖値が上がりやすい食品を後に回すのです。

とんかつ定食を例にしてみましょう。とんかつ定食が出てきたら、まずはキャベツを食べましょう。その際、ゆっくりと良く噛んでキャベツのもつほのかな甘みを楽しんでください。最近はキャベツのおかわりができるお店もありますので、可能ならおかわりして食べて下さい。その後はおもむろにメインのお肉を味わって、最後にご飯をおみそ汁とともにいただきます。

これが急激に血糖値を上げないコツです。できれば懐石料理やフランス料理のコースのように、1品ずつゆっくりといただくのが理想ですが、ご飯とおかずを交互に食べなくては気が済まない人は、まずは野菜類やGI値の低いものから食べることを心がけてください。それだけでも長期的に考えれば随分違ってきます。

このように同じメニューを食べる場合でも、食べる順番を心がけるだけで、糖化を防いでアンチエイジングにつながることをお忘れなく。

【食べる順番による血糖値上昇の違い】

第12回

糖化のお話をするとよく聞かれることがあります。それは、甘いお菓子は食べない方がよいのでしょうか?という質問です。

お菓子類に多く含まれている砂糖やブドウ糖は、GI値が極めて高く、急激に血糖値を上げる食材の代表選手です。よく「脳のエネルギー源はブドウ糖」ということもいわれますが、脳の代替エネルギーは存在しますし、少なくとも現代日本の食生活では、極端なベジタリアンでもなければ砂糖不足(炭水化物不足)という事態はありえません。むしろ炭水化物の過剰摂取による糖化の促進の方が問題です。

しかし、お菓子なども絶対に食べていけないのではなく、空腹時にたくさん食べるのはよくないけれど、食事の後のデザートとして適量であれば、害は少ないということになります。 また、果物はどうですか?という質問も多いのですが、果物は食物繊維を多く含んでいるため、ジュースなどにせず、そのままゆっくりと食べるのであれば全く問題ありません。

むしろグレープフルーツなどは、パンなどの炭水化物や揚げ物などを食べる前に食べると血糖値や中性脂肪などの急激な上昇を抑えてくれる働きもあります。また、果物は調理をしないで食べられるため、調理で壊れやすいビタミンCなどのビタミン類を効率よく摂取できる利点もあります。ですので、甘いものが欲しくなったら、GI値の低い果物(グレープフルーツやオレンジ、りんご、みかん)などをゆっくりと食べることをおすすめします。

第13回

これをお読みになられている読者の方は、ダイエットにもご興味があるのではないでしょうか?キレイになることとダイエットは切っても切り離せない関係ですね。 実は、肥満を改善する場合も、糖化を避ける食事療法が有効であるという医学的な検証結果が発表されました。

肥満対策の食事療法には、カロリーを抑えた方がいい、脂肪を抑えた方がいい、炭水化物を抑えた方がいい、など様々な議論と検証がなされてきましたが、権威ある医学雑誌「ジャーナル・オブ・アメリカン・メディカル・アソシエーション」に「炭水化物ダイエット」が、一番効果的であるという論文が発表されたのです。

炭水化物を減らす食事療法としては、低インスリンダイエットやアトキンスダイエットなどが知られていると思います。麺類やご飯類を多く食べる日本では定着しませんでしたが、野菜とお肉だけでダイエットできるということで、アメリカでは一時ブームになった食事療法です。

つまり炭水化物が、特に血糖上昇とインスリン上昇を引き起こすという部分を問題視して、それを抑制するようなダイエット方法に肥満改善効果が認められているのではと解釈できます。大幅なカロリー制限はありませんので、比較的長続きしやすく、リバンウンドを引き起こしづらいダイエットになるのではないでしょうか。

ただ、昨今の傾向として既にやせ形の体型にも関わらず、ダイエットしてもっとやせたいと思う女性が多いように思われます。女性は必要以上にダイエットで皮下脂肪を減らすと、体が冷えてしまいますし、子宮や卵巣を育てる大切なホルモンは、脂肪から分泌されています。体脂肪が20%以下の場合は、ダイエットに走らず、炭水化物が6割、タンパク質と脂肪がそれぞれ2割というバランスの食事で、糖化を避けるためにゆっくり食べる、というアンチエイジング的食生活がおすすめです。

第14回

糖化という反応が恐ろしいのは、最終的に老化を促進する遺伝子のスイッチを押してしまうからです。

人が若者から高齢者に移行していく過程は、老化遺伝子のスイッチを押していく過程ともいえます。遺伝子は一つの細胞の中に3000~5000個あり、すべての遺伝子が常時働いているわけではありません。何かの作用に反応してスイッチが入ると、その遺伝子が働きだす。老化遺伝子のスイッチを押せば、老化モードへと移行していくことになります。

たとえば、皆さんが大好きなコラーゲンを合成する(作る)ときに必要な酵素を、若者はどんどん分泌します。しかし、老化の遺伝子のスイッチが入ると、たんぱく質を壊してしまうコラゲナーゼという酵素がでてくるのです。これによって、大切なコラーゲンの合成が妨げられ、皮膚の弾力性が低下していきます。

また、炎症反応やストレス反応に関するスイッチがどんどん押されていくと、あちこちが痛くなったり、ストレスを感じやすくなったりしていきます。炎症に関係する代表的な遺伝子がありますが、この働きを活性化するのが糖化です。これまで細胞内に存在していたけれど働いていなかった遺伝子が、糖化によってスイッチが押されてしまうのです。

アンチエイジング、言いかえればいつまでも若々しく美しくいるためには、老化モードになる遺伝子のスイッチを押さないことが大切です。スイッチが入るタイミングはできるだけ遅い方がいい。そのスイッチを押さないためには、糖化反応を抑える生活習慣を心がけることが大切なのです。

第15回

これまで糖化しないためのアンチエイジング的食生活のお話をしてきましたが、皆さんの中に果糖などの糖分が含まれる果物は、糖化に対してどのような影響があるのか疑問に思う方がいるかもしれません。今回は果物と糖化の話をします。

「果物はデザートだし、甘みもあるから糖化には良くないのでは?」と思われるかも知れません。確かに急激な血糖値の上昇を避けるためには、甘いものはあまりお勧めできませんし、空腹時ではなく食後に食べるのがベターということになります。 しかし、こと果物に関しては反対を意味する研究結果が出ました。果物を先に食べてから食事を摂ることで、血糖値の上昇が緩やかになって糖化の害を軽減する可能性があることが分かったのです。

私たちの研究室では今年、フロリダ州政府柑橘局の協力を得て、グレープフルーツの糖代謝と脂質代謝に与える影響を調査しました。そこでは、「グレープフルーツを先に食べて食パンを食べたとき」「食パンのみを食べたとき」の血糖値・インスリンの上がり方を比較しました。 すると、先にグレープフルーツを食べたときの方が血糖値の上がり方、インスリンの分泌の仕方のいずれも良かったのです。

さらに「グレープフルーツを先に食べてかき揚げを食べたとき」と「かき揚げのみを食べたとき」で中性脂肪の上がり方を比較しましたが、その結果もグレープフルーツを先に食べたときの方が良かったのです。※臨床医学室ページ参照 この研究結果により、具体的に果物を先に食べる方が良いということが言えるようになりました。次回は、なぜ果物の結果が良かったのかお話します。

第16回

前回お話したように、果物(グレープフルーツ)を先に食べることによって、血糖値の上がり方を緩やかにできるということが私たちの研究で分かってきました。 なぜ果物には糖分が含まれているのに、パンやかき揚げより先に食べると血糖値の上がり方が緩やかになるのでしょう?

これは果物には食物繊維やビタミン類などが豊富に含まれているからです。果物そのものを食べるということは、糖分だけがそのまま取り入れられるのとは違うのです。

また、近年の他の研究でも果物はがんをはじめさまざまな生活習慣病に対して予防効果が高いことが分かっています。文部科学省、厚生労働省、農林水産省が決定した食生活指針においても果物は野菜と同様に毎日の食生活にとって必需品であると位置付けられています。

しかしながら、毎日の果物摂取の目安である200gに対し、現在の日本人の平均摂取量は約110g程度とまだまだ摂取が足りないのが現状です。特に20代~40代の方々の平均摂取量は約75g程度とさらに不足しています。

果物でしたら皮をむいて切るだけで、調理をせずに簡単に食べられますし、調理をすると損なわれてしまうビタミンCなどの大切な成分もきちんと取り入れられますから、忙しい朝にも最適です。「朝の果物は金」ということわざもあるくらいです。朝食の時はパン一枚ではなく、果物を一緒に摂ることをお勧めします。これにヨーグルトでも付ければ、バランスの取れた立派な朝食になります。

第17回

前回、果物なら皮をむいて切るだけで、調理をせずに簡単に食べられるので、忙しい朝にも最適とお話ししました。 皆さん、ちゃんと朝食を食べていますか?

朝食は英語で「ブレックファスト(Breakfast)」といいます。「Break」は「壊す」「破る」などの意味があり、「Fast」は、「早い」の他に、「断食」という意味があります。つまり、「睡眠は断食している状態」であると考えて、夜の断食を破って食事をすることから、「ブレックファスト」と言い表しているのです。

断食明けの食事、という面から改めて考えると、朝食を摂ることの大切さがわかってきます。 朝食をきちんと食べた場合の血糖値、インスリン(血糖を下げるホルモン)、インスリン拮抗ホルモン(血糖を上げるホルモン)の変化を下の図で見てみましょう。

血糖値の上昇は緩やかで、インスリンなどのホルモン分泌も規則正しく適量の分泌です。 これに対し、朝食を抜いた場合の図が下のものになります。

一目瞭然ですね。昼食時の血糖値のピークを見てください。なぜこのように血糖値が上がるかというと、朝食を抜いたことにより、低血糖状態が長く続き、血糖を保つためにインスリン拮抗ホルモン(血糖を上げるホルモン)が昼食前にたくさん分泌されている状態です。その状態で昼食を食べますから、当然食後の血糖値は通常に比べ高くなります。

さらに、今度は高くなった血糖値を下げるインスリンがたくさん分泌され、急激に血糖値が下がります。するとまたインスリン拮抗ホルモンが分泌され、血糖が上がりやすくなる。ジェットコースターのように血糖値や糖代謝に関係するホルモンが上下しています。

こうなれば、体内で糖化が進むのはもちろん、インスリンもインスリン拮抗ホルモンも膵臓から分泌されるため、膵臓に負担がかかり、糖尿病をはじめ、様々な病気のリスクが高まります。

ですから、朝食はとても大切です。必ず食べるように心がけましょう。

第18回

今回は糖化を大きく促進させてしまう「異性化糖」というものについてお話しします。

異性化糖とは、ブドウ糖と果糖を主成分とする液状糖で、原料はトウモロコシやジャガイモ、あるいはサツマイモなどのデンプンです。果糖含有率(糖のうちの果糖の割合)が 50% 未満のものを「ブドウ糖果糖液糖」、果糖含有率が 50% 以上 90% 未満のものを「果糖ブドウ糖液糖」、果糖含有率が 90% 以上のものを「高果糖液糖」、上記の液糖に 10% 以上の砂糖を加えたものを「砂糖混合異性化液糖(その液糖がブドウ糖果糖液糖なら砂糖混合ブドウ糖果糖液糖)」といいます。 “果糖”は、ブドウ糖の10倍も糖化を早めます。”果糖”によって生成されるAGEsは、私たちの研究室での実験でも以下のように、ブドウ糖より大幅に増えています。

このように“果糖”が多く含まれる「果糖ブドウ糖液糖」や「高果糖液糖」などの「異性化糖」は砂糖に比べて安価なため、菓子や清涼飲料水から調味料まで様々な加工食品に使われている一方で、糖化を大きく促進しますので、とりすぎに注意することが必要です。 また、“果糖”が良くないと言うと、果物が良くないようにとられがちですが、果物そのものの“果糖”含有量はそれほど高くない上、繊維やビタミン類なども豊富に含まれていますので、これまでお話ししてきたように適量を食べる分には全く問題ありません。

第19回

今回は糖化と骨の関係についてお話ししたいと思います。

皆さん骨粗しょう症という病気をご存じだと思います。特に女性の方は聞きなれた病名でしょう。 1993年にWHOが「骨粗しょう症は骨密度が低下する疾患」と定義しましたが、2000年にNIH(米国国立公衆衛生研究所)で開催されたコンセンサス会議において、骨粗しょう症は「骨強度が低下する疾患であり、骨強度は骨密度のみならず骨質にも影響を受ける」と定義され、「骨強度=骨密度+骨質」と明記されました。つまり、骨密度以外に骨強度に影響を与える因子として、骨質の重要性が論じられるようになってきたのです。 さらに、骨質をみていく上で、骨基質の主要な構成成分であるコラーゲンの善し悪しが重要とされるようになってきました。 コラーゲンは骨の体積あたり50%を占める主要な線維タンパクで、α(アルファ)鎖3本から成る3重らせん構造をとっています。 細胞外に分泌されたコラーゲン分子は、規則正しく配列する際に、隣り合う分子間や分子内に架橋結合を形成します。この架橋には骨強度を高める善玉架橋と、骨を脆弱にする悪玉架橋があります。 これまでお話をしてきたような糖化が進みやすい生活をしていると、この悪玉架橋が過剰に形成され、コラーゲンからしなやかさを失わせ、硬くてもろい状態へと変化させ骨密度を低下させます。

ですから、骨粗しょう症を予防するためには、骨の材料となるミネラルを十分に摂取し、その材料を沈着させるために、骨に刺激を与える運動を行うとともに、糖化されにくい生活習慣を心掛けることが大切なのです。

第20回

前回は糖化と骨の関係についてお話ししましたが、今回は糖化とアルツハイマー病の関係についてお話しします。

アルツハイマー病は、脳を構成している神経細胞が通常の老化よりも急速に減ってしまうことによって、正常な働きを徐々に失っていき、認知症(痴呆)になっていく病気です。原因はまだわかっていませんが、遺伝的な要因に加えて生活環境の影響が重なり、発病すると考えられています。

アルツハイマー病の原因として、アミロイドβ蛋白の蓄積があげられますが、このアミロイドβ蛋白は40個のアミノ酸からできており、16と28番目のアミノ酸が糖化されると推定されています。またアルツハイマー病の患者脳の前頭葉から得た蛋白分画には、健常老人と比べて3倍のAGEsを含むことが報告されています。 現在、アミロイドβ蛋白のAGE化は2次的な修飾として起こるという考え方が主流ですが、糖化による蛋白質間の架橋がアミロイドβ蛋白の凝集・沈着を促進・加速する因子として関与しているとも考えられています。 また、糖化によって産生されるAGEs(後期糖化反応生成物)が神経細胞のアポトーシス(細胞死)とも関係していることが分かっています。 これらのことは、糖尿病の患者ではアルツハイマー病の発症率が健常人に比べて高いことからも裏付けられます。

いつまでも若々しくきれいで元気に、もちろん認知症などにもならず自立した生活を送るためには、これまでにお話ししてきた糖化をさせない生活習慣を実践することが大切なのです。